タイプ1:場違い星雲 謎のニセ寓話星人


採集日 1999年7月19日
採集地 東大和アニソン研究所・アニソン掲示板
推定目的 不明
リモートホスト 金沢工業大学(lc020.etc.kanazawa-it.ac.jp)

どうやら、「したきりすずめ」の話をベースに、すずめを役人になぞらえてアレンジしたらしいが、それが何かの効果をもたらすほどにはなっていない。個々の台詞などに凝るあまり、全体としてどういう意味を持つのかわからなくなっている。いや、意味なんか無いのかも知れないが。
長い割には読後の達成感が乏しく、ネタばかり先行して筆力が追いついていない典型的な例である。



Subj:・・・・・  投稿者:したきりすずめ  投稿日:07月19日(月)16時23分19秒

したきりすずめ

昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました。
おじいいさんは退職直前に勤務先の厚生年金基金が破綻し、おばあさんは国民年金
の第三号被保険者の資格取得届を平成九年の救済措置年限までに出さなかったため
に受給資格に瑕疵を生じ貧乏に暮らしていました。
そこでつれづれの慰みに、庭にくるすずめに「ちゅん」と名前をつけて、ときおり
えさをあげては、ちゅんがうれしそうに食べるのを眺めて暮らしておりまし。
ある日、おじいさんは山へ木を切りに行き、おばあさんは川へ洗濯に行くことにし
ました。おばあさんは洗濯のりを鍋で煮ると、庭先のすずめに、「ちょっとのりを
見ていておくれ」と頼んで、出かけていきました。
すずめは最初前向きではありませんでした。
「この老女の要求は、すずめに対するものとしてはやや過大であると言わざる得な
い。すずめは一部の奉仕者ではなく、この老夫婦にだけ特別な便宜供与を行うのは
、法の下の公平を原則とするすずめの行為としてはやや妥当性を欠くものかもしれ
ない」
はっきりいえば、面倒なのでシカトしてしまおうと思ったのですが、飛び立と
うとしたときに、ふと鍋の中身に目がとまりました。そこには、おいしそうなのり
が、とろとろと煮えこごまっておりました。
立ち止まったすずめは、鍋の側でしばらく思案しましたが、結局次のように考
えることにしました。
「鍋を見守ると言う行為の中には、当然ながらのりの品質を点検することも含ま
れていると解さざる得ない。それにより、洗濯物の仕上がり品質が向上するとする
ならば、それはこの老人たちのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献するきわめ
て社会的意義が高い行為であるだろう。それが円滑な社会に発展に寄与すると考え
られるものであるならば、決して躊躇すべきでないだろう」
すずめは鍋の側に寄り、のりを一口なめました。よく煮えたのりは、それはそ
れは芳醇な味わいがしました。
しばらくのりを眺めるうちに、すずめはさらにこう考えることにしました。
「老女の負託にこたえてのりを見守るのはすずめの業務の一環でありつつ、しか
し通常の業務よりも過剰な労務であることは論をまたない。それについて相応の手
当を受けることは、すずめの行いとして著しく正当性を欠く行為であるとは必ずも
言えまい。」
すずめはもう一口のりをなめました。のりは柔らかくすずめの舌を包み、なん
とも言えぬコクが口の中いっぱいに広がりました。
すずめはさらにこう考えました。
「手当て以外ののりを私的に受領することは、確かに外形的事実としては責め
られるべきかもしれない。だが、私と老夫婦との間の交流における儀礼的な贈答ま
でも拒絶することは、社会とすずめとの間の円滑な会話を妨げる意味ではあえて避
けることかもしれない。」
すずめはのりををもう一口なめました。たまらなく美味しく、舌から喉に豊かな
気分が広がりました。
最後にすずめはこう考えました。
「どの程度までが儀礼的贈答と認められるかどうかについて、私自身が判断する
のはむしろ不遜のそしりを免れえまい。それは社会状況に応じて考えられるべきで
あり、仮に比較的大きな贈答関係が存在したとしても、それが社会全体の幸福と言
う大きな目的のために行われるのであるならば、決して杓子定規判断されるべきも
のではない。すなわち私の行為の正当性は歴史が判断することであるはずだ。」
すずめはそのささやかな宴会に「洗濯のり問題研究会」と名付け、また一口、
もう一口と鍋の中身をなめつづけ、とうとう全部なめ尽くしてしまいました。
そうこうするうちにおばあさんが洗濯物を抱えて帰ってきました。しかしのり
が見当たりません。
「ちゅんや、のりはどこかねえ」
すずめは言いました。
「資料を点検してみましょう。あるいは台所にあるかもしれません。」
おばあさんは台所を覗きましたが何もありません。
「台所には無かったわいな」
すずめは言いました。
「のりの品質にはまったく問題なかったと思われます。ある意は納戸にあるかも
しれません。」
おばあさんは納戸を覗きましたが、やはり何もありません。
「納戸にもなかったわいな。」
すずめは言いました。
「多分制度的に公開がまだ認められていないのでしょう。しばらく待つのがよい
と思われますよ。」
ついにおばあさんは語気を荒げて言いました。
「そんな話があるかい。ちゅん、お前がどこかに隠したんじゃあるまいね。」
おばあさんの剣幕に驚いたすずめは、とうとう白状しました。
「食糧費をはじめ限りある政策資源を有効に使うためには、それを繰り越して死
蔵の危険を招致するのではなく、むしろ年度内に消化したほうがより適切な…」
「お前が消化しちまったんだねっ」
怒ったおばあさんは、はさみを取り出して言いました。
「ああ、すずめなどに頼んだ私が馬鹿だった。どれ世間様をなめている悪い舌は、
いったいどの舌だね」
すずめが思わず舌を出すと、おばさんはそれをちょきんとちょん切ってしまい
ました。
すずめは飛びあがり泣きながら逃げていきました。
そこへおじいさんが戻ってきました。
「おばあさん、ちゅんが見えんがどうした」
おばさんは、
「のりをなめた罰に舌を切ったら逃げて飛んでいったわいな」
おじいさんはすずめの公徳心について一定の信頼を寄せていましたし、またすずめ
を怒らすとどうなるかについて若干の不安もあったものですから、
「むごいことをするものだ。わしはちょっくらわびにいってくるわい」
といって出かけていきました。
「舌きりすずめはどこじゃいな。こっちの薮かあっちの薮か」
すると山の中に深い竹薮がありました。そこから何やら電話人を呼びつけたり
部下を叱ったり、お茶をすすったり、鼻糞をほじったりするような音がします。お
じいさんは声をかけました、
「舌きりすずめのお宿はこちらかいな」
竹薮の中から声がしました。
「業者の方は名刺入れに名刺だけ入れてください。」
「わしは業者ではございません。ちゅんと言うすずめがおられたら、ちょっくら
会いたいと思うとります」
竹薮の中でしばらく相談をぶつ声しばらく続いた後、おじいさんはすずめのお宿
の中のソファと油絵のある会議室に案内されました。
まもなく恰幅の良いすずめが部下とともに入ってきて、おじいさんに腰掛けるよう
にすすめました。すずめは心なしかおじいさんを警戒してるようです。まわりでは
若いすずめ達が無言でメモ帳にペンをはしらせています。
すずめは言いました。
「皆さん国民の声を聞くことをすずめは重視しています。今回、ご案内のよう
に、どうも皆さん国民と私たちの間で意思疎通を欠くような事態があったようです
ね。この問題に関しては特別に調査を命じてありますので、しかるべき観点から適
切な処置を取らさせていただきたいと、かのように考えております」
おじいさんはなんとなくすずめはなんとなく変なしゃべり方をするものだなぁ、
と思いましたが、そういう生き物なんだと思って黙って聞いていました。
恰幅のよいすずめは、さらにちゅんちゅんと理解不能な言葉をならべましたが、そ
の合間をぬっておじいさんは言いました。
「そったら大層なことではございません。うちのおばあさんが、そちらのすずめ
さんの舌を切ってしまったので、これはすまぬことをした、とわびにまいりました

とたんにややホっとした空気があたりに流れました。すずめは言いました。
「あ、そうですね。わかりました、ちゅん君を今呼びますから」
若いすずめが廊下に飛び出しました。別室ではすずめ達が口々にちゅんちゅんと
相談しておりました。
「すずめに対する暴力行為を放置しておいてよいのですか」
「士気にかかわります。のりだったら、みんなそれぞれの判断で食べているじゃ
ないですか」
「すずめはキレい事だけでは仕事できません。ただでさえ、変なすずめ監視団体
がのさばってやりにくいと言うのに」
「いや現在はすずめに対する社会の批判が厳しい。ここはこらえるべきだ」
「そもそも民間ののりを食べちゃったのは、ちゅん君のミスだよ、ミス」
「訴訟沙汰になる前に、ちゅん君におじいさんとのコンセンスをとって何とかさ
せたまえ」
まもなくちゅんがやってきました。おじいさんは言いました。
「ちゅんや、すまんことをした。舌は取り返しがつかんが、わしに免じてこらえ
てくれんか」
ちゅんはいいました。
「もちろんです、今回の一件における非は全面的におばあさんにある訳ですが、
それについて私からとくに事を荒立てるつもりはありません。そもそもすずめの仕
事には一定の危険がつきものですし、そのような危険を恐れていては社会全体のへ
の奉仕と言う大目的のためにけっしてならないことは十分にわきまえてまいりたい
と思います」
舌を切られたのによくしゃべれるものだ、とおじいさんは思いましたが、そうこう
しているうちに上等な玉露が運ばれてきました。
別室では、さらに相談が続いていました。
「形質的にせよこちらの誠意を示し示談成立の形に持っていくためにつづらを持
たせてはどうか」
「そうだ、前例にとらわれず適切な行政判断をしよう」
「でも、前につづらを下げ渡したのは随分前だ」
「やはり書類がそろってないとまずいんじゃないか
「関係各局間のすりあわせも必要でしょう」
「よし、みんな今日は残業覚悟で取り掛かってくれ」
何枚もの文書が作成され、そこに何十個ものはんこが押され、日が暮れておじ
いさんが心細くなってきたころ、すずめたちは、うんしょ、うんしょ、とつづらを
持ってまいりました。
すずめは言いました。
「おじいさんにつづらを助成する案件について、庁内会議で決裁を受けました。
つきましてつづら交付申請書を提出してください」
おじいさんは、交付申請書を書くことにしました。でも交付申請書の書式を定
めた通達が無かったので、すずめたちは結局、便箋に受領書を書いてもらうことで
よしとしました。
「では、大きなつづらと小さなつづらの、どちらをおもちになりますか」
おじいさんは言いました。
「わしは年寄りなんで大きいのは重たいから、小さいつづらをもらいましょう」
すずめたちはおじいさんが小さなつづらを選んだので少し驚きました。
「人間は我々すずめに常に過大な要求をするものだと思っていたが
「よい人間もいるものだね」
「我々もやる気が出るよ」
示談のカタがついたので、割腹のよいすずめはうってかわってくつろいだ様子に
なり、おじいさんと談笑しはじめました。
「いやあ、ここだけの話、私も若いころ第3セクターに出向していたときに、や
はりのりをなめすぎて舌を切られたことがありましてねえ。でも我々キャリアすず
めには、舌が余分にあるんで助かりましたよ、わはは」
すずめが笑い名がら口を開くと、中に立派な舌が四枚ほどうねくっていました。
おじいさんは一瞬すずめが信じられなくなりましたが、すぐに気を取り直して、家
路につきました。
おじいさんが家に帰ってつづらを開けてみると、どーん。中からぞろぞろざく
ざくと書類が出てまいりました。
大半は「政治家に寄付を依頼するのは処罰の対象になります」と言ったありき
たりなお知らせみたいなものでしたが、中におじいさんの家のある番地を激じん災
害指定地として税額控除が受けられるようにした証明書が入っておりました。
「おばあさんや、来年度から無効三年間は税金が安くなるよ。やれうれしや」
しかしこれを見ておばあさんは言いました。
「これは私もいかなくてはなるまいね。まだ何かもらえるかもしれん」
おじいさんは、すずめ相手ではこれでもう十分ではないかといさめましたが、
おばあさんは言うことを聞きません。
次の日、おばあさんはお家を出て、山道をずんずんと分け入っていきました。
「舌きりすずめはどこじゃいな。こっちの薮かあっちの薮か」
おばあさんはやっとのことで、すずめのお宿につきました。表では、何やらカメ
ラのフラッシュがたかれる中、背広姿の男達が次々と大小取り混ぜたつづらを運び
出していました。
でもおばあさんはかまわずに、裏口からずいずいと中に入っていきました。
「今は取り込んでいますから後にしてください」
とすずめ達は制止しましたが、おばあさんはお構いなしにあちこち探し回り、
とうとうちゅんを見つけ出しました。
「ちゅんや大きいつづらももらえんかのう」
ちゅんは無言で大きなつづらをおばあさんにもたせました。
「おじいさん今帰りましたよ」
「大丈夫だったかね」
「もちろんですよ。さあつづらを開けましょう」
おばあさんがつづらを開くと、どーん。
なかから、まむし、かえる、むかで、へび、ひとつ目小僧、亀井静香、その他
の妖怪どもに交ざって、強制代執行命令書とブルドーザーが出てきて、おじいさん
とおばあさんの木造モルタル築三十五年の家をあっという間にぶっ壊してしまいま
した。
おばあさんは支援者を集めて、すずめの不当行為だとして行政訴訟に持ち込み
ました。
十三年ほどかかりましたが勝訴して、「大きなつづら交付差し止め命令」を裁判
所から勝ち取りました。
もちろん、だからといっておばあさんが豊かになったわけではありませんし、
すずめがのりをなめるのをやめたわけでもありません。そしておじいさんとおばあ
さんの家のあとは、現在はすずめ圏央道が通り車がぶうぶう行き交っていると言う
ことです。
はい、とっぴんしゃん。

おうちの方へ
古いことわざにも「すずめ百までおごり忘れず」というのがあります。昔から
人間は、すずめに痛い目にあうことがあったようです。
しかし、人々が汗水たらして得た収穫を、すずめが勝手についばむと言って、
すずめだけを目の敵するのは、正しい態度とは言えないでしょう。お隣の中国では
、毛沢東と言う
偉い人が大躍進政策を取った時代に、田畑を荒らすすずめを絶滅させてしまえと
言うむちゃなお触れが出されて、かえって害虫がはびこって困ったと言う故事もあ
ります。
多くのすずめはまじめに働いているのだと思います。むしろ問われているの
は、何でもすずめ任せにしてしまう私たちの自覚の乏しさなのかもしれません。
もちろん最近の一部のすずめの振る舞いには、ちょっと目にあまるものがない
ではありません。すずめは、やはり人間とは別の法的・倫理的体系の中で生きてい
るのでしょうか。
ちなみに、動物に法的人格を認めるかについては、色々な議論があります。米
国では、便宜的にそれを認めるとする判例も存在していますが、日本においては認
められていないようです。

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